コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

特異点解消定理

中学の頃、親から勧められて広中平祐先生の「学問の発見」を読んだ。

広中平祐先生は代数幾何学の世界的権威で、フィールズ賞受賞者だ。

フィールズ賞受賞の理由は特異点解消定理である。

当時の自分はおろか今でもその理論を理解しているとは言い難いが、次元を上げてみると解決不能の問題も解決可能になることを示したものと理解している。

数学の理論なので厳密に構築されている理論だということに間違いは無いと思うが、この考え方が敷衍可能だとすれば、きわめて有意義なものと思料する。

よくout of box thinkingというが、なかなか箱から出ることは難しい。まして積み上げの学問とされる数学の世界においては況んやおやであろう。

我々は日頃あまりに自分たちが知るフレームワークで物事を解決しようとし過ぎているのではないか。

まったく異なる解決方法がある可能性を自ら排除してはいないだろうか。

昨今言われているシンギュラリティ(特異点)についても一面的にしか見ていないのではないだろうか。

もし世界最高の頭脳ならシンギュラリティに関してなんと答を出すだろうか。

おそらく彼はその答を公にしないだろう。

なぜならそれは既得権益にとって「不都合な真実」だからだ。

埋もれていく、あるいは隠れた「不都合な真実」は多々存在する。決して報道されない。ネット上にもない。

哲学の出番だ。

コンサルの技シリーズ(13)大企業のベンチャー投資

昨年から、Corporate Acceleratorとかなんとか、大企業が新たな技術(AIなど)を取り込みベンチャー企業に出資したり買収したり、あるいは出資はせずとも提携するといった取組が増えている。

動機はもっともだし、自社にないケイパビリティ(技術のみならず)を外部経営資源によって補完するというのも合理的ではある。

しかし、大企業とベンチャーの組み合わせには根本的に合理的でない側面があり、これをマネジメントする(なんとかする)ことができる人材は大企業には稀有である。

何が根本的に合理的でないかというと、企業文化である。

「あー 企業文化ね」と思われるかもしれないが、ではこの文脈での企業文化とは何か、説明しようとすると言葉に詰まるのではないだろうか。

 

コンサルの技シリーズ(12)事業撤退

コンサルの技シリーズ連載12回目は、おそらく最も難度の高い事業撤退についてシンプルに述べる。

特に日本企業相手の難度は高い。

難度が高いということはすなわちコンサルティングのニーズが強くかつコンサルに求められる能力水準も高いため、一流でなければ務まらないし採用されないことを意味する。

事業撤退の意思決定をさせることはM&Aより遥かに難しい。保有バイアスがあり、既得権益があり、社内外の強い抵抗があるからだ。

コンサルティングのテーマとしては新規事業より難しい。チャンスがあることを証明するより無いことを証明する方が難しいからである。

事業環境分析を的確かつ緻密に行なうだけでは到底事業撤退の意思決定には至らない。

 

 

ゾウキリンの相棒の謎

全国にその愛くるしさを知られる埼玉県新座市のマスコットであるゾウキリン。

なぜゾウキリンというのか。

雑木林をすべて音読みしたかららしい。

www.niiza.net

 

そのゾウキリンには相棒がいる。

 

しかしその相棒の正体は謎に包まれている。

 

おそらく鳥であろうと思われる。

 しかし鳥の種類も名前も生い立ちも性格もわからない。

ウェブには情報がないため、念のため新座市産業観光協会に問い合わせたところ:

 

「わかりません」

 

とのこと。

 

いやいや、わからない筈などない。新座市産業観光協会のウェブサイトの「週刊ゾウキリン」にしっかり登場しているのだぞよ。

www.niiza.net

総務省の移住ナビのページにある画像ではゾウキリンと共に描かれているではないか。

全国移住ナビ 新座市

 

これはきっと何か隠蔽しなければならない理由があるに違いない。

不都合な真実かもしれない。

調査を継続する。

コンサルの技シリーズ⑪紺屋の白袴

日本の諺に「紺屋の白袴」がある。

コトバンクの定義を引用する:

「紺屋(こうや)の白袴(しろばかま) 紺屋が、自分の袴は染めないで、いつも白袴をはいていること。 他人のことに忙しくて、自分自身のことには手が回らないことのたとえ。」

これは例外なくどのコンサルティングファームにも当てはまる。

コンサルティングファームの常套ソリューションは経営の効率化であり組織能力の向上であるが、果たして自分の会社でそれができているか。

答は「否」である。

正直に申し上げて自分が属するファームも例にもれない。

企業は(単なる壁掛けではない)ビジョンを有し組織全体として真にビジョンを共有し、従業員全員がエナジャイズされ自分のみならずチームとしてのパフォーマンス最大化を実現すべき、とコンサルファームは必ず説く。

しかし自分はどうなのか。

クライアントに共通して存在する課題を自らも抱えており、しかも解決できていない。

これでは全く説得力がない。

組織能力の高さというものは、外から見えにくくしたがって模倣し難いがしかし中長期的な成長をドライブする最高の競合優位性の源泉である。

しかるに、実際には短期的な、目先の案件候補やクライアントに劣後しているのは構造的に正しい現象である。悲しいかな。

真に一流のコンサルならばしかしこの構造的課題を克服せねばならない。

規模に依らず我々コンサルは組織の論理に抗わねばならない。

リーダーシップ、ビジョン、オペレーティングメカニズム、モーダスオペランディ。これらが一貫していなければならない。

リーダーはまず構成員をレスペクトせねばならない。コンサルファームはこれが下手くそだ。

定義によりスーパーコンサルがプロモーションされる世界。

わかりやすいエッジを持った人材が即戦力として採用される昨今。

それらが本来の組織能力向上を阻害している。

真のリーダーはこれらを理解し実践できなければならない。

まずはリーダー各位には自分が構成員にどう評価されているか謙虚に受け止めるべき。

謙虚さを失ったリーダーが率いる組織に未来はない。

コンサルの技シリーズ⑩PMI

コンサルの技シリーズ10回目はこれまたコンサルタントとしての総合力が問われるPMI(post-merger integration、買収後統合)を取り上げる。

PMIについては、コンサルタントとしても、また事業会社における実務の両面で携わっているので、その経験を活かして社外研修の講師も務めているが、研修で教えていることはコンサルタントとしての基本動作とPMIの重要性のコンビネーションである。

いまでこそ経営者も(日本電産の永守さんほど本心からそう言っているかは定かでないが)PMIの重要性を唱える人が増えてきているが、実際にPMIに十分に注力(少なくともクロージングまでに費やす経営資源を大きく上回る量と質の経営資源を投じなければならないにも関わらず)している企業は寡聞にしてほとんど聞かない。

理由は明快である。大きく2点:

  1. PMIの効果発現には時間がかかり可視化も難しい(これに較べM&A成立は大変わかりやすい)
  2. しかも、PMI自体の難度が高い(それだけのシナジーを創出するのであるから簡単である訳が無い)。

新規事業同様、構造的な問題がここにある。

最近ではしかし、1番目は克服している日本企業は増えてきたように見える。しかしそういう企業に限って2を理解していない。自分でやってしまい失敗するのである。

経営のあらゆる側面に言えることだが、内製を大前提とするのではなく、ベストを尽くすにはどうするかを常に考えねば無責任である。

ましてM&Aという巨額の投資に対するリターンに無責任であっては当然ならない。

投資銀行はPMIにはまったく興味がない。それどころか堂々と「PMI嫌い」とまで言う方も実在するので実にわかりやすい。

 

PMI成功のポイントは3つ:

1. 100日プランの策定と確実な遂行における機動性と柔軟性とプライオリティの担保

2. アーリーウィンの創出

3. ビジョンの共有

これら全てに共通するのが十分なコミュニケーションである。

両社のトップから現場まで。部門横断的に縦横無尽に適時に適切なメッセージを伝え理解を促すことだ。

 

毎回メッセージは同じ。これぞコンサルの技の見せどころなのだ。

コンサルの技シリーズ⑨新規事業の立ち上げ

以前このブログにも書いたテーマであるが、いかなるエクセレントカンパニーであろうとも不得手なことは新規事業の立ち上げである。

いやより正確に言うと、きちんと立ち上げることができないのである。

これは組織能力云々ではなく構造的な問題である。

 

jimkbys471.hatenablog.com

 

先日、ある大企業の社長から新規事業立ち上げ支援のお題をいただいた。

その依頼を受け、提案を作成して経営企画担当役員に提示したところ、このような反応であった。

「これまで弊社内でも似たようなアイデアは出ています」

「売上100億円が見込める事業アイデアである必要があります」

「弊社の場合着手してもなかなか長続きしないのです」

「新規事業を推進する担当者が十分にいないのです」

などなど。

 

これはいわゆる「あるある」である。

やらない言い訳を並べているに過ぎない。そして、大企業の社員はやらない言い訳(決して「できない」とは言わないところがポイント)ができるほど(ある意味で)優秀なのである。

決してこれは皮肉ではない。組織は攻めも守りも必要だからである。

コンサルタントは当然ながら企業のこの本質を理解しておかなければならない。

新規事業とは定義により必ずしも得意でないことを手がけることである。

戦い方も異なるかもしれない。

今まで出会ったことがない敵に出会うかもしれない。

ということでこれも十分に組織力学的に説明できてしまう。

やはり構造的なのでありこれを克服するのがコンサルの技である。

新たな領域で最も効果的に可能な限りリスクを抑えて収穫を得るか。そこに最適解を見出す技である。

コンサルの技シリーズ⑧能ある鷹は爪を隠す

基本スキルであるロジカルシンキングフェルミ推定、各種定量分析により高度なファシリテーションやインタビューなどについて述べてきたが、今回は一流のコンサルタントは能ある鷹でなければならないことについて述べる。

そう。能ある鷹は爪を隠すものである。

それはなぜか。

我々コンサルタントがお話をさせていただくクライアントや、クライアントのお手伝いをする上でお付き合いさせていただく方々のほぼ全員はコンサルタントではない。

投資銀行や金融機関、あるいは会計士や弁護士、税理士など専門サービス業の方々ともよくお話をするが、大多数は事業会社の方であったり、個人の経営者であったり、一般の方々であったりする。

それらの方々と打ち解け合うには、才気煥発であることは2の次なのである。むしろそれを前面に出してはならない。

一般論を言えば、人間はロジックを振りかざすのは戦う時である。刀のようなものだ。

有事でないのに刀を振り回す危険人物になってはいけないのだ。

そして、下手に隠して嫌味になってはいけない。むしろ隠し方の方が難しい。

一流のコンサルタントは能ある鷹でなければならない。爪を隠すのも技である。

コンサルの技シリーズ⑦若手のレバレッジ

大手のコンサルティングファームでは新卒も中途も採用するが、採用した若手を如何に「レバレッジ」できるかは、ファームのエコノミクスを維持する上で必須であり、プロジェクトを効率的効果的に遂行するかを左右する。

そしてこの「レバレッジ」はプロマネ(プロジェクト・マネジャー)が行なわなければならない。

若手(必ずしも若くない場合もあるので、この文脈では新人、あるいはシニアなポジションでもまだ入社して日が浅い人を指すことにする)は、まだコンサルタントとしての基本動作を身に着けていないので、ひとつひとつ基本動作を学びながら成長していく。

新人の武器はしたがって、知識やスキルではなく(いくら優秀な学生や前職で実績を挙げた中途でも、そのままでは使えない)成長意欲である。

プロマネはこの成長意欲を損なうことなく、プロジェクト遂行に必要な作業を、若手のその時点での能力に合ったまとまりとレベルに分解して若手に指導しながら与えることができなければならない。これがコンサルの技である。

もう少し具体的に述べると、プロジェクトの成果物を創出するために答えるべき論点を設定し、論点に対する仮説を構築、そして仮説を検証するために必要な作業を洗い出し、その作業と進め方をチームとして最適に分担し期間内に完遂できるような単位に設計する(ワークプラン)ことである。

これは言うに易しであり、これが常にできるプロマネ人材というのは、コンサルティング業界に限らず、どの業界でも通用する人材であり、最も稀少価値の高い(あまり稀少価値が高いことは良いことではないのだが)人材である。

コンサルティングファームの若手はおそらく5年もそのファームにいれば長い方なので、この期間にこの価値の高いプロマネ力を実践を通して身に着けるのである。

若手はプロマネレバレッジされつつも、プロマネの技を盗む。できるプロマネからもできないプロマネからも学ぶことはできる。

できるプロマネには技を盗めるし、できないプロマネについたら自分がストレッチしてプロマネ実践の一部を担えるチャンスである。

コンサルの技シリーズ⑥攻めのインタビュー

連載6回目の今日は、プロのコンサルタントの重要なスキルとして、今回はインタビューを取り上げる。

コンサルタントはそもそも知識と思考のみならず情報収集・分析、広義のコミュニケーション能力やビジネスツールを駆使するスキルなどの「総合力」を問われるが、インタビューは瞬間芸も問われる一種の知的格闘技であると言える。

インタビューというとジャーナリストがあらかじめ用意した質問を順番に聞いていく、そしてたとえば全国紙の記者が大企業の経営者に全国紙の権威を借りて質問するといったものも含むが、コンサルのインタビューはそれらとは全く違う。

コンサルのインタビューは、仮説検証に必要なクリティカルな、公開情報からは得られない情報を、その道のエキスパートから聞き出すという高度なインタビューである。

そしてそれを自分は一般的なインタビューと区別するため、ファシリテーション同様、「攻めのインタビュー」と称する。

攻めのインタビューはタフである。

相手はその道で世界有数のプロである。経営者だけではない。科学者もいる。外科医もいる。オリンピックメダリストや俳優である場合もある。

もちろん日本人とは限らない。

初対面の一流企業のトップとの電話の場合もある。

肝臓がんの3時間のオペを終えて来たばかりの医者もいる。

コンサルタントという人種を全く理解していないどころか毛嫌いしている人もいる。

1時間もらった筈が、急用が入り5分で頼むということになる場合もある。

しかしいかなる場合でも、本当に聞く必要があることは聞かねばならない。答を引き出さなければならない。

そしてインタビュアーはファームのブランドを傷つけてはならない。

まさに総合知的格闘技である。