コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

読書メモ:負けを活かす技術(為末大)

最も尊敬しまた注目する日本人のひとりが為末大さんです。

為末さんは、陸上男子400mハードルの日本記録保持者で、世界選手権で2度銅メダルを獲得、オリンピックにも3回出場されている世界的なアスリートです。

為末大 - Wikipedia

男子400mハードルの日本記録47秒89は為末さんが16年前、法政大学在学時代の2001年8月10日に樹立したものですが、未だに破られていませんし、破られる気配もない大記録です。

トップアスリートというと才能に恵まれ運に恵まれ環境に恵まれというイメージをつい抱きがちですが、決してそんなことはないことが為末さんの近著を読むとわかります。

www.amazon.co.jp

著者の為末さん自身が重要なセンテンスは太字にされていますが、その中でも特にメモしておきたい、そして座右の銘にしたい記述は:

  • 「必ず人が感謝するとか、それがいつかどこかで返ってくるということを信じ過ぎてはいけない」
  • 「努力はまったく等価交換ではない」
  • 「払っている努力自体に、すでに報酬が潜んでいるのが、スポーツだと僕は思っている。少なくとも、明確な目標に向かって、日々をいききと生きるという報酬がすでにある」
  • 「自分の欲求に嘘をつき過ぎてはいけない。でも、それに自分自身を染め過ぎても危ない」
  • 「孤独になったとしても、実は思ったほどの寂しさはない、ということも知っておくだと思う。むしろ、僕は気持ちがラクになった。孤独になったことで、清々しい気持ちになれた」
  • 「僕に一番力が出たときは、のびのび楽しくやったというより、ぐっと圧力がかかっていて、最後の最後で開き直れたときだった」
  • 「そもそも、勝負の瞬間には、実はプレッシャーはないのである」
  • 「シリアスになり過ぎない、かっこつけ過ぎない、いい人でい過ぎないことが大切」
  • 「人からの批判は跳ね返しやすいが、期待は跳ね返しにくいものだ」
  • 「いい集中の状態というのは、元来、エゴイスティックなものである」
  • 「スランプにはまらないということは、変化していないということである」
  • 「未来や過去を意識せずに、今できることをやろう、と考える。余計なことや概念を捨てるようにする」
  • 「自意識というのは、自分を客観的に眺めていることだが、その自意識が極めて薄くなって、ただひたすら行為に集中している」
  • 「どこまで行っても、人生は賭けである」
  • 「スランプに入ったときは、よくしようとはするが、必ずよくしなければいけないとは思わないようにする」
  • 「勝ったところで、実は何も解決しないからである」

 

これまでわだかまっていたことが、これらのことばで急に氷解したのみならず、なんだか意欲を喪失し、疲労感や閉塞感に苛まれてきた自分が急に楽になり、目の前が開けたような気分にいまなっています。 

動的ネットワークバイオマーカー ~将来あるべきヘルスケアを支える技術~

まことに手前味噌ながら500投稿目です。今回は将来有るべきヘルスケアを支える技術として長期的に大いに期待すべき技術について書きたいと思います。

一昨年、数理シミュレーションシステムに強みを有する㈱構造計画研究所のご招待で、同社主催のセミナー「KKE Vision 2015」に参加しました。

その際、数理モデルの第一人者の一人である東大の合原一幸教授の基調講演を聞き、いくつか刮目すべきアイデアが披露され興味を抱きました。

そのうち、地震予知から感染症対策まで様々な分野における最先端の数理モデル応用による効果のうち、動的ネットワークバイオマーカーに大きな期待を感じたので、今回はこれをイノベーション(予備軍)として取り上げたいとおもいます。

 

動的ネットワークバイオマーカー(Dynamic Network Biomarker, DNB)とは、中国古代の医療の基本思想である「未病」の概念を、最先端の科学で実現しようという試みです。

現在の診断では、明らかに一つあるいは少数の指標が異常値を示した場合、それを以て疾病と診断します。

しかし、これは既に「未病」の状態から完全に「病」の状態へ移行してしまった状態であり、既に治療可能な状態を超えている場合もあります。

また、従前より唱えられている予防医学は、未病から病に移行する遥か以前の段階に維持しようというもので、これも効率的とはとても言えません。

DNBは、より望ましい身体の状況に関する様々な多数の指標のビッグ・データを、その変動特性の観点から数学的に分析することで、未病状態の診断そして病気の状態への発病の引き金を引く因子群をみつけることが出来るというものです。

一般には、複数のバイオマーカーから成るネットワークとしてのゆらぎが、発病の引き金を引きます。つまり、発病するということは特定の指標だけが変化して後はすべて不変、ということではなく、互いに相関する、或いは相反する多数の有意義な指標全体の変化とそれらの関係から、どう未病から病への閾値を超えたかを、合理的・定量的に判断するものです。

これは数理工学の進歩とビッグ・データを収集・解析する一連の技術の実用化によって初めて可能になったことで、長期的には根本から医療を変える可能性を秘めています。

この理論は複雑なシステムの挙動、すなわちたとえば経済予測や地震予知にも応用されつつあります。

かつては大量のデータを扱うことは原理的には可能でも実際には処理時間とコストの面で非現実的であり、バイオマーカーも特異性が低くかつ種類も乏しいなど、動的ネットワークバイオマーカーがとても実践できる状況ではなかったものが、技術的にも経済的にもmake senseする可能性が見えてきています。そして、財政面からもまた個人・社会の意識の向上といった側面からもその必要性が認められ得る状況になってきているとおもいます。

ねこさん勝手にランキング #ねこあつね(5)きまえのよいねこさんたち

ねこあつめのアップデートがもう既に6か月超もないという異常事態なので、ねこあつめの熱心のファンの方々は様々な楽しみ方を工夫しています。

1か月前から、「どのねこさんがもっとも気前がよいか?」を検証すべく、あそびに来ておいて行ってくれるにぼしの数を記録しました。

ねこさんによって来てくれる頻度が違うので(前回投稿ご参照)・・・ 

jimkbys471.hatenablog.com

・・・最近10回の来訪の記録をとりました。

 

気前のよさは、1回往訪あたりの「銀にぼし」の数で測っています。なお、金にぼしと銀にぼしがありますが、銀にぼし500個で金にぼし10個に交換できるので、金にぼしを置いて行ってくれた場合には、金にぼし1個=銀にぼし50個で換算しています。

 

では気前のよいねこさんトップ10の発表です。

きまえよさベスト10

1位

あかさびさん

77.4

2位

えきちょうさん

76.2

3位

はいしろさん

73.0

4位

くりーむとらさん

58.1

5位

きっどさん

58.0

6位

こいこいさん

51.1

7位

さふぁいあさん

50.0

8位

ぷりんすさん

48.5

9位

ながぐつさん

45.6

10位

なべねこさん

43.7

 

あかさびさんはなかなか来てくれません。さびがらさんと似ているのですがさびの面積がさびがらさんより多いのが特徴です。あまり来てくれませんが来てくれたときには金にぼしをくれることが多いのです。

 

そして、この記録と前回の、あそびに来てくれた回数とを組み合わせ、通算で最も多くにぼしを置いていってくれたねこさんを集計してみました!これは世界初の統計かもしれません!!!

 

にぼしくれたかずベスト10

1位

はいしろさん

439,168

2位

とびみけさん

169,615

3位

さびがらさん

141,158

4位

とーびーさん

133,102

5位

ちゃとらさん

125,546

6位

きじとらさん

121,458

7位

くろとらさん

97,926

8位

はいいろさん

94,268

9位

しろさばさん

92,043

10位

しろねこさん

89,678

 

やっぱよくきてくれるはいしろさんがトップなのですねー!

さびがらさんも3位に入っています!

 

1位のはいしろさん:

f:id:jimkbys471:20170626172004p:image

2位はとびみけさん:

f:id:jimkbys471:20170627051817p:image

3位はさびがらさん:

f:id:jimkbys471:20170627051834p:image

みんないつもありがとう!!!

ねこさん勝手にランキング(4)よくきてくれるねこさんたち #ねこあつめ

 ひさびさのねこさん勝手にランキング、第4回です。

ちなみにこれまでのランキング3回はこちら:

jimkbys471.hatenablog.com 

jimkbys471.hatenablog.com 

jimkbys471.hatenablog.com

 

今回は、過去約2年間でもっとも多くの回数あそびにきてくれたねこさんトップ10です!

きた回数ベスト10
1位 はいしろさん 6,016
2位 くつしたさん 5,748
3位 とびみけさん 5,419
4位 しろねこさん 5,338
5位 はいいろさん 4,761
6位 くろねこさん 4,607
7位 ちゃとらさん 4,452
8位 きじとらさん 4,449
9位 さびがらさん 4,425
10位 しろちゃとらさん 4,182

 

1位のはいしろさん:

f:id:jimkbys471:20170626171611p:image

2位のくつしたさん:

f:id:jimkbys471:20170626171906p:image

3位のとびみけさん:

f:id:jimkbys471:20170627042843p:image

 

みんないつもありがとう!!

ヘルスケア業界を読み解くキーワード(2)先端技術編②

前回は、毎週社内メルマガで書いているヘルスケアコラムのキーワードのうち、先端的な技術のキーワードを6つ選び解説しました。 

jimkbys471.hatenablog.com

 

前回に続き、今回も先端技術編②としまして、6つのキーワードをご紹介します(6に特に意味はありません・・・)。

 

マイクロバイオーム

  • 数年前からTVCMなどで取り上げられるようになった腸内細菌が健康の鍵を握るものとして着目されています。ヤクルトは昨年「腸トレ」というコピーを使うようになりました。
  • マイクロバイオームとは、人体内に棲息する細菌群のことで、近年研究領域として特に脚光を浴びています。腸内細菌叢あるいは腸内フローラというのはマイクロバイオームの真部分集合で、人体の最近の多くが腸内に棲息していることから特に着目されているものです。腸以外では口腔内や皮膚にも細菌叢は存在します。
  • 腸内には約3万種類、1,000兆個、総重量にして2kgにもなる細菌が、表面積30㎡(従来言われていた250㎡=テニスコート1面分というのは誤りのようです)に棲息しているとされ、それがまるでお花畑のように見えることから「フローラ」と呼ぶのだそうですが、この腸内フローラは免疫システムや老化防止に大きく貢献していることがわかってきたために一躍注目されるようになった訳ですね。腸内細菌の働きはこれだけでなく、いくつかのビタミン類を合成し、またセロトニンドーパミンの前駆体を合成してくれるということなので、栄養面や精神的な効能も司っていることになります。
  • マイクロバイオームは単に細菌が群集しているのではなく、動的に人体と相互作用しまた変化する高度なシステムと見做すのが現代の見方なのですが、実はその動態については殆ど解明できてないのが現状です。
  • 昨年5月末に、世界最大の腸内細菌研究のひとつ、フランドル腸内細菌叢プロジェクトの初の研究成果として、ベルギー・フランドル生物工学研究所から、千人以上の便検体を分析した結果、腸内細菌叢の構成に影響を与える69の因子が同定された、という報告がなされました。この結果は、将来の疾患研究や臨床研究に重要な情報を供給するものだそうです。2012年に始まったこのプロジェクトは、最終的に5千人のフランドル人の腸内細菌叢を解析し、細菌と健康・食事・生活習慣の関係を明らかにしようとするもので、所謂ビッグデータアナリティクスですが、それでもマイクロバイオームに関するエビデンスの一つが構築されるに過ぎず、この先に新たな診断や治療の研究が必要な訳ですが、従来の診断・治療や健康管理を大きく変える可能性を秘めている領域と言えるでしょう。

 

ペプチド医薬

  • 次世代の医薬品として、核酸医薬と並び注目され、国内外で医薬品メーカーやベンチャーが取り組んでいるのがペプチド医薬です。
  • 従来の医薬品は化学合成で作る錠剤など低分子(分子量500以下)、一方で現在グローバルで売上上位を占める抗体医薬品など生物学的製剤は高分子(分子量100,000のオーダー)と分類されますが、その中間(分子量数千~1万程度、明確な定義はない)のものに核酸医薬やペプチド医薬が位置します。
  • ペプチドはたんぱく質の一種でアミノ酸がつながってできたもので、特定の標的と中分子であることの最大のメリットは、化学合成で生産できるため、製法への依存度が高くまた(現時点では)安定的な大量生産が難しい抗体医薬とは対照的に安定的に大量生産ができ、品質を担保しつつ低コストで生産できることです。
  • ペプチド医薬品自体は実は既に臨床で使用されており、中でもシクロスポリン(商品名ネオーラル)はWHOの必須医薬品リスト(38号で取り上げました)にも掲載されている重要な医薬品ですが、近年上記のとおり各社が取り組んでいるのは、機能性ペプチドと呼ばれ、特定の機能を人工的に付与することができる種類のペプチド医薬です。
  • 日本のバイオベンチャーであるペプチドリームはノバルティスやサノフィ等と既に提携している有望な企業ですが、API(原薬)メーカーの浜理薬品工業も昨年ペプチド医薬事業拡大を発表、また積水化学も既に5年前にペプチド医薬品製造受託事業拡大のためJITSUBO社との提携を発表しています。しかしこの分野は既に欧米に大小多くの競合が鎬を削っている世界となっているため、ペプチドリーム始め国内プレイヤーの事業展開を応援したいところです。

 

Cox比例ハザードモデル

  • また難解なキーワードと思われたかもしれませんが、この統計用語は1980年代前半から既に回帰分析に使われ始め、工学、医学の幅広い分野でますます活躍している数理モデルの一つです。以前このコラムで医療統計をとりあげましたが、医療統計には欠かせないモデルです。
  • ロジスティック回帰(ロジスティックスではありません)は広く知られていますが、統計的に検証したい対象によって当然ながらモデルは使い分けるものであり、医学においてはCox比例ハザードモデルはたとえば様々な要因でハザードつまりある危険事象(疾病、死亡など)がどう説明され、それが治療(例えば薬物の投与)によってどう変化するか、その変化は統計的に有意であるかを検証することに最も適しておりかつ母集団の限界など現実的な制約の中で最も使いやすいモデルとされています。
  • 幅広く使われているモデルなので、ウェブ上で検索すると大学の講義資料など簡単に見つかりますが、一件多変数の指数関数や対数関数が出てくるのでとっつきにくいものの、既にExcelのアドオンなども出ており実用にはまったく問題ないレベルに整備されています。
  • 筆者の友人には医師が多いのですが、彼らと話していると普通に統計用語が出てきます。医学部の講義では医療統計学というのがあり、正規分布、指数分布、ポアソン分布、といった基本的なパラメトリックモデルはもちろん、ワイブル分布といった極値分布、さらにロジスティック回帰やこのCox比例ハザードモデル、また一般化ウィルコクソンモデル、また各種検定など、単にそういう名称があるということのみならず、それがどういうモデルでどういう場合に使うべきものかを医学部では学びます。
  • また、製薬会社にも開発部門に生物統計を専門とする部隊がおり、当然ながら彼らはこういった医療統計に知悉しています。我々コンサルタントがこのようなモデルを使うことは実務上これまではあまりありませんでしたが(戦略ファームでもそうですね)、これまでは取得できなかった情報が容易に低コストで収集できるようになり、より多くの局面で定量化およびそれに基づく意思決定が必要になってくる中、また我々のクライアント側がこういった数理ツール・モデルを駆使するようになっていきアナリティクスの能力を高めていく中、コンサルタントとしても知らないでは済まされない領域になってきているかと思い今回その代表例として取り上げました。

 

オートファジー

  • 昨年のノーベル医学・生理学賞を受賞された大隅東工大栄誉教授の業績で一躍知られることになった「オートファジー」についてはここのところ新聞やTVでさんざん取り扱われているので、ベタな解説は不要かと思いますが、タイムリーな話題なので筆者なりにそれが何なのか、なぜ有意義なのかについて述べてみたいと思います。

  • Autophagy=self-eatingなので日本語では「(細胞の)自食(作用)」と訳されていますが、学会・業界では専らオートファジーと呼ばれています。広義には細胞死の一つの類型であり、細胞死にはより古くから知られる、アポトーシスとかネクローシスがあります。

  • なぜオートファジーがいま注目されているかというと、単純にノーベル賞を受賞したからに他なりません。既にあちこちで書かれているとおり、1970年代に現象としてのオートファジーは電子顕微鏡下で観察されていましたが、長らくそのメカニズムが究明されなかったのです。

  • 日本企業のコスモバイオや医学生物学研究所が「オートファジー銘柄」として株価が高騰したのは、たとえばコスモバイオはオートファジー(アポトーシスもですが)を検出する検査キットを既に販売したいたからであり、医学生物学研究所もオートファジーのモニタリングに有効な抗体を製造・販売しています。

  • ハンチントン病アルツハイマー、パーキンソンといった難治疾患はある種のたんぱく質の(過剰な)蓄積・凝集によることが知られているので、もしオートファジーのメカニズムを究明し、かつそれを人為的にコントロールすることができれば、これら疾病の治療に画期的な手法が誕生することになるので、それは低分子であれ高分子であれ医薬品業界にとって新たなブレイクスルーの可能性を直接示唆します。実際、既に低分子化合物でもオートファジーを誘発する効果を有するものが発見されています。

  • なお、オートファジーは体内のアミノ酸プールを維持すべく飢餓状態で発動するので、たとえば絶食によって自己免疫疾患やがんが治るとまではいかなくとも軽快する、という勝手な筆者の仮説はこのオートファジーのメカニズムがより詳しく解明されればエビデンスが構築できると思いますし、薬に頼らない健康回復・維持のアプローチが有効であることがはじめて証明されるかもしれないと期待しています。

 

間葉系幹細胞

  • 再生医療というとiPS細胞やそれ以前に注目されたES細胞(解明は30年超も前のことですが)が著書も多く出ており有名で人口に膾炙していますが、再生医療の中でも最も今投資が行われている細胞治療(cell therapy)の臨床開発後期段階にあるものは、そのいずれでもなく間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell, MSC)です。
  • 先日FMIコンタクトのある財閥系企業(当該分野での買収に意欲的)と話をした際、先方からMSCに興味があるとの発言があり、折しも再生医療のプロジェクトが始まっていたのでちょうど詳しくなったところで、よい議論ができてよかったのですが、それはともかく間葉系幹細胞というのはiPS細胞やES細胞といった多能性幹細胞とは異なり、より分化が進んだ幹細胞(その名の通り細胞分化を樹状図に描いたとすると枝葉(最終段階まで分化が進んだ)に相当する細胞の手前の幹の部分に相当する細胞の事です。
  • 再生医療というとテルモの心筋シートやJCRのテムセルは既に承認・上市されていますし、また従前からある臓器移植(肝臓、腎臓、心臓等)は広義の再生医療ですが、再生医療の最先端でありかつ最も有望と目されているのはこの間葉系幹細胞を用いた細胞治療であり、この成否で再生医療が本格的に市場としてまた産業として立ち上がることを理解されるとよいと思い取り上げました。

 

エピジェネティクス

  • エピジェネティクス(epigenetics)とは、Wikipediaの定義によると(必ずしも厳密な定義ではないという断り書きがありますが)、「DNA塩基配列の変化を伴わない細胞分裂後も継承される遺伝子発現あるいは細胞表現型の変化を研究する学問領域」ということです。
  • 平たく言うと、DNAに直接関連しない遺伝情報に関する研究領域であり、広義にはその健康・医療への応用・展開のことです。
  • 上記の定義はやたらとアカデミックな定義ですが、要するに冒頭の「DNA塩基配列の変化を伴わない」というところが重要です。
  • 過度な一般化は避けたいところですが、一般的には(医学や生物学を専門とする方以外にとっては)遺伝と言えばDNAに書き込まれていると思われていることと思います。かつてはそういう認識が学界においても支配的でした。しかし近年の研究(とはいっても原理的には1940年に発見されたということですが・・・)で、ヒトを含む個体の形成・変化が必ずしもすべて先天的な要因で定められるものではない、ということが認識されるようになってきたということです。ちなみにepiという接頭辞はラテン語で「超えた」を意味します。
  • 医学においてはがんの診断・治療が引き続きホットな領域ですが、エピジェネティクスの進展は次世代のがん治療にとって極めて重要な役割を果たすことが期待されています。

日本の製薬産業の取るべき道は3つ(その4)

前回(その3)では戦略方向性の2つ目、「コスト・リーダー・プレイ」について書きました。今回は3つ目、名付けて「中分子レイヤーマスター」です。

台頭する可能性のある中分子医薬であるペプチドや次世代抗体医薬、核酸医薬の疾病領域や基盤技術を含めた国として注力すべき分野の特定と企業間連携を促進する仕組・制度の構築、です。

ペプチド医薬は抗体医薬等の高分子よりも分子量が少ないので中分子と言われるものの代表格となっていますが、これに関しては日本の(数少ないうまくいっている)バイオベンチャーであるペプチドリームが先頭を切り、また塩野義製薬積水化学・ペプチドリーム等が連携してペプチド医薬品製造受託を指向すると報じられました。

また、もう一つの中分子医薬のカテゴリーである核酸医薬については、「グローバル・ニッチ・トップ」を掲げる日東電工がAvecia社とGirindus社を買収して事業プラットフォームを構築、味の素も数年間検討の後に(これには筆者もコンサルとして関わっていました)Althea社を買収するなど、機運は高まっています。

民間でのこのような取組もあるのですが、国として産業育成することも必須です(決して足を引っ張らないように)。

民間のこのような仕組を後押しする役割も(単なるコンソーシアムで終わらぬよう)国が果たすべきです。

再生医療においては逸早く(欧米に先駆け)法整備をしたものの、米国も負けてはいません。

未だ日本で再生医療の治験はほとんど行なわれておらず、このままでは再生医療でも「敗戦」の憂き目を見てしまいます。そうならないことを期待したいのですが、その対象はまさに中分子医薬です。

決して中分子医薬のバリューチェーンをすべて持つインテグレーターになる必要はなく、中分子の医薬品への応用と生産において確固たる強みを構築して他を圧倒的に引き離すレイヤーマスターになる戦略は、日本企業の文化の面でもフィットしていると思います。

ぜひ日本プレイヤーに勝っていただきたい。そしてその為に自分ができることをやっていきたいと思います。

日本の製薬産業の取るべき道は3つ(その3)

前回は3つの戦略方向性の1つ目「カテゴリー・フォーカス・プレイ」について書きましたので、今回は2つ目について書きます。

 

2つ目とは、「コスト・リーダー・プレイ」です。

日本の技術力を活かしたコモディティ医薬品の抜本的な生産システム革新(連続生産の導入など)とこれによる圧倒的な低価格の実現、これによりまずは国策として医薬品作業高度化に注力している中国企業への技術供与・出資、次にASEAN諸国、さらにはアフリカ等への展開を狙うべき、というものです。

この戦い方が可能であるという根拠について、筆者はこのように考えています。

根拠はおおきく2つあります。一つ目は製薬会社は従前より極めて利益率が高く(製品原価率が30%といった水準)原価意識が低いこと、二つ目は生産システムがバッチ生産であり連続生産導入による少量多品種でも大幅な原価低減のポテンシャルがあること、です。

この2つが、昨今のおよび今後火を見るより明らかな薬価抑制圧力の高まりの中で必然的に低コスト化を促すこと、そして製薬会社は生き残りを賭け低コスト生産競争に走らざるを得なくなること、です。

かつて(といってもそう遠い昔ではありません)の日本ではジェネリックといえども新薬の7割の価格で売ることができましたが、今では最初から3割とか市場価格制度の米国の水準にどんどん近づいています。

めざすべきは、日本でのコスト競争に生き残るという水準を遥かに超えた圧倒的低コストでの生産システムを、異業種の知恵も入れて「ものづくり」の本領を発揮して構築し(必ずしもハイテク化ではありません)、ちょうど良い品質(そもそも品質とはちょうど良いものであって高級とは全く違います)を誰よりも安く作ることができる筈です。

電力生産性の低い日本で作ることが障害になるのであれば、生産地を移せばよく、広義の技術を提供することで価値を創造すればよいのです。

次回は3つ目の戦略方向性について書きます。

日本の製薬産業の取るべき道は3つ(その2)

前回(その1)では、日本の製薬産業はどうあるべきか、どこに行くべきかに関する私論としての3つの戦略方向性があることを書きましたので、今回はこの1つ目について書いてみたいとおもいます。 

jimkbys471.hatenablog.com

 

3つの方向性の一つ目は「カテゴリーフォーカスプレイ」です。これは、2004年に山之内製薬と藤沢薬品が合併し現在のアステラス製薬が誕生した際、「グローバル・カテゴリー・リーダー」というビジョンを策定されたものに近いです。

既存プレイヤーである上位内資系製薬メーカーには、抗がん剤や高分子医薬品の創薬に特化すると共に、米国NIHが創薬を担っているように日本としても国全体として創薬をどう強化するか、その基盤をどう構築するかも、国として医薬品における産業競争力を維持する為にも必須である、というのが端的に言うとその方向性です。

新薬開発には長い開発期間(10年、15年)と巨額の開発資金(1新薬あたり1,000億円オーダー)が必要である、というのは製薬メーカーが何十年来しつこく主張していることですが、その開発の初期段階である創薬において最も重要な役割を担っているのは製薬会社ではなく、米国では国の機関であるNIH(National Institute of Health)であるという報告をどこかでみたことがあります(探しておきます)。

また、バイオベンチャー(海外ではベンチャーとは言わずスタートアップと言いますが)にしても、製薬会社はあまりアーリーステージで売上も利益も立っていないスタートアップへの投資にはどちらかといえば消極的であり、エンジェルやベンチャーキャピタル、PE(プライベート・エクイティ)がむしろ薬を育てているといっても過言ではないかもしれません。

日本にはNIHに匹敵する研究機関はありませんし、創薬ベンチャーに対する投資もアメリカの比ではありません、これでは永遠に日本が米国に伍する日は到来しませんし、差は開くばかりです。

ただし、特定のカテゴリー(ニッチというよりはより大きい市場セグメント)で集中して強みを発揮することは可能でしょう。

たとえばがんと言ってももはやあまりに市場の定義として広範過ぎるため、先日もこのコラムで述べたように作用機序で、たとえば「免疫チェックポイント阻害剤」という領域にフォーカスするとか、そういう戦略になってくるでしょう。

日本で大手とされる新薬メーカーが従前の「競合の収斂(competitive convergence)」から脱却し、戦略の本質に立ち返って経営方針を定め、集中して投資する、これこそが3つの方向性の一つ、カテゴリーフォーカスプレイという戦い方であり、ぜひ各社各様のフォーカス(ちゃんと定めることが大切)で戦っていただきたいと思っています。

次回は(その3)として戦略方向性の2つ目について書きます。

ヘルスケア業界を読み解くキーワード(1)先端技術編①

ヘルスケア業界を担当するコンサルタントとしては、最新のキーワードを業界を、特に業界の変化を読み解くコンセプトとして捉えて理解していなければなりません。

毎週社内メルマガに一つずつ自分の解釈つきで紹介しているものをシリーズで書いていきたいと思います。

シリーズ第1回目は先端技術編です。

 

ベイズ統計

  • ビッグ・データに関連し、ヘルスケアに限った話ではなく政治や金融、ITの分野で近年ようやく活用され成果をあげつつある数学、特に統計の1分野であるベイズ統計は、実は医薬品や医療機器のシーズ探索含む開発期間短縮に威力を発揮することが期待され、応用が始まっています。既に2006年に医療機器開発に関して米FDAからガイドラインを出されました。
  • ベイズ統計(Bayesian Statistics)とは、簡単にいうと従来一般的に理解されている確率・統計論と異なり、既にある情報を基に、より少ない試行(という数学用語が統計学を判り難くしている)すなわち実験でより信頼度の高い推定が得られる手法であり、理論としてはかなり古い(18世紀イギリスの数学者トーマス・ベイズ(Thomas Bayes)が提唱)ものの、最近脚光を浴びているのはいわゆるビッグ・データの台頭に起因しています。
  • 数学的な説明は割愛するが、ベイズ統計は条件付確率に関するベイズの定理が基本、すなわち既にある事象が起こっていることがわかっている前提である仮説が正しいかどうかを検定するアプローチです。ベイズ統計における確率はしばしば「主観確率」と呼ばれ、一見して厳密さを欠くと誤解されることもありますが、言ってみれば「仮説ドリブン」であり、より不確実性が高い状況で威力を発揮する。従来の確率は「頻度主義」であり、無限回の試行(たとえばサイコロ投げ)を前提としているが、ベイズ確率は複数の仮説(MECEな仮説構築が必要)のもっともらしさを調べる、より現実的なアプローチなのです。
  • 一般に基礎数学は直接ビジネスに関係ないと思われているが、そうではない。また、このような考え方をもっているかいないかで行動規範まで左右されることもあります。ベイズ統計はその一つです。
  • IoT、Industry 4.0といわれる流れの中で、今後もっとも必要とされる人材はデータ・アナリティクスができることとよく言われるが、データ・アナリストにとってベイズ統計は必須だという人も出てきています。

 

インシリコ

  • インシリコ(in silico)は珪素を意味するラテン語silicoの中で(この場合inもラテン語です)という意味で、珪素半導体の意味、すなわちコンピュータで、ということです。特にヘルスケア領域においては生体のメカニズムや新薬の効能等をモデリングの上数値シミュレーションすることを意味します。インシリコに対して、動物や人体で試すことをインビーボ(in vivo)、試験管などを用いて実験することをインビトロ(in vitro、vitroはガラスの意味)と言い、医薬品業界や医療従事者は当たり前のように使う言葉です(ラテン語を使うとかっこいいと思うのは米国人もそうですが)。
  • 実際、インシリコ創薬という分野が出現しています。インシリコで新薬をデザインするには、まず創薬ターゲットの探索が必要で、このためにゲノム情報やバイオインフォマティクスを利用します。次に、創薬ターゲットに対してドラッグデザイン(文字通り薬物の設計)を用いて、病因を阻害する薬剤候補を探索します。さらに、その薬物がどういう挙動をするか、インシリコADME(吸収、分布、代謝、排泄)、PKPD(薬物動力学)で計算機で予測するというもので、これらは従来in vivoやin vitroで行なわれていたことを一部もしくはかなりの部分代替するもので、新薬開発プロセスにおいてますますコンピュータとITが浸透していくことを意味します。

 

ファーマコゲノミクス

  • ファーマコゲノミクス、pharmacogenomicsとは、pharmacology(薬理学)とgenomics(ゲノム学、ジェノミクス)との合成語で、広くは遺伝子の違いによる薬の効き方の違いに関する一連の研究を指し、最近ではより限定的に個人の遺伝子型に起因する薬による副作用(重篤事象)の発生を回避することを意味し、最近ではあまり使われなりましたがテーラーメード医療、個の医療を実現するのに不可欠な、重要な研究分野です。
  • 薬の副作用には軽いものから致命的なものまで様々なものがありますが、重篤なものの中には薬剤性肝障害や特定疾患であるSJS(スティーブンス・ジョンソン症候群、薬疹の中でも特に重症のもの)があり、これらは遺伝子に起因することが判ってきています。
  • かつては薬の効き方の違いを「体質の違い」とかたづけていたものが、ファーマコゲノミクスが進展するにつれ、その「体質」とはつまり遺伝子のことであることが次々に判明しており、「下手な鉄砲数うちゃ当たる」的なものであった薬物治療がより選択的に、すなわち有効になってきています。そしてそれを判断するものが「ゲノム診断」と言われる遺伝子型の検査で、既にいくつかの検査は保険収載されています。さらに、遺伝子に起因することが判明した疾患を対象に新たな薬を開発することをゲノム創薬と呼んでおり、ファーマコゲノミクス、ゲノム診断、ゲノム創薬をまとめてゲノム医療ということもあります。
  • 遺伝子編集も今最もホットな分野であり、従来の薬理学の知見の上に、コンピュータやITの進展によるin silicoの拡大、さらに製薬会社のみならず様々な業種の参入の相乗効果が期待される領域です。

 

クオンテイフェロン

  • 昨年、警視庁渋谷警察署で昨年19名が結核に感染していたことがニューズになりました。結核に感染しているか否かを調べる検査としては喀痰検査や血液検査がありますが、よく知られている血液検査法であるツベルクリン反応には実はBCG接種を受けている人が陽性になる(偽陽性)という重大な欠陥があるため、この欠陥を克服する新しい血液検査の方法が既に使われています。この検査がクォンティフェロン(QFT(インターフェロン-γ測定試験)と呼ばれるものです。
  • この検査は、血液を結核菌特異抗原(ESAT-6とCFP-10)とともに20時間程度培養し、特異抗原により刺激を受けたTリンパ球により産生される、インターフェロン-γ(IFN-γ)という生理活性物質の量を酵素免疫測定法により測定し、結核の感染を判定する方法です。BCGの影響を受けずに結核検査が可能であること、血液で、数日間で検査が可能なことから、結核患者と接触があった場合の健診に使用されています。ただし、過去に結核を罹患したことがある人は必ず陽性になるので、新たに感染したか否かの判定には使えないという問題もあるので注意が必要です。
  • 結核は現在でも世界で毎年800万人が感染しその25%である200万人が死亡する恐ろしい感染症であり続けています。日本での感染者数は毎年2万人前後ですが、先進国の中では高い方で「中蔓延国」とされています。乳児の段階でBCG接種を受けてもその効力は成人になる頃には既に失われていますし、必ずしも高齢者だけが感染・発症する疾病でもないため、私たちも留意しましょう。

 

PD-L1

  • 新しい薬の中で、いま最も注目を集めているのががん免疫療法ですが、PD-L1とは、新たに解明されたがん細胞が人体の免疫から自分を防御する抗体のことです。
  • 人体を防御する上で最も重要な働きをする免疫システムが、自らの細胞が変異したものとはいえがん細胞を攻撃できない、したがって人体を侵すがん細胞が増殖できる理由は、がん細胞が発現するPD-L1という物質が、がんを発見した樹状細胞(免疫システムの司令塔的存在)から指令を受けたT細胞(免疫の前線で働く)が、がん細胞を攻撃しようとしても、このPD-L1がT細胞が発現するPD-1と結びつくことで、T細胞が攻撃を停止するという「免疫逃避機構」が作動してしまいます。
  • 新薬の開発の第一歩は、まずこのようなメカニズムを特定することであり、いわば問題の半分は解決されたことになり、次は解決方法の探索になります。そこで、この免疫逃避機構を阻害する、「免疫チェックポイント阻害薬」の開発に各社乗り出すことになりました。抗PD-L1抗体もしくは抗PD-1抗体の開発です。2013年には米科学誌Scienceが”Breakthrough of the Year”に選出した領域でもあります。
  • 日本の中堅製薬会社の中でも、新薬開発がなかなか進まず、長期収載品に頼ってきた代表格が小野薬品で、その将来展望はこれまでは明るくなかったのですが、オブジーボ(一般名:ニボルマブ)という抗PD-1抗体の開発に成功し2014年にはメラノーマ(悪性黒色腫)を適用として承認されたことで一躍脚光を浴びることになりました。
  • ロシュ(中外の親会社)やファイザーといったグローバル大手製薬会社各社も免疫チェックポイント阻害剤を開発中であり、次の大きな医薬品市場セグメントを形成することになるでしょう。

 

プロテオミクス

  • プロテオーム解析(Proteomic analysis)、またはプロテオミクス(Proteomics)とは、特に構造と機能を対象としたタンパク質の大規模な研究のことです。 タンパク質は細胞の代謝経路の重要な構成要素として生物にとって必須の物質です。
  • プロテオミクスproteomicsはタンパク質proteinと「総体」を意味する接尾語-omeの合成語で、ゲノミクス(遺伝子genome+ome)と同じ構成であり、一つのタンパク質を対象とするのではなく、ある組織や個体の中のタンパク質の集合・構成を総体として分析するもので、これによりたとえば正常組織がなぜどのようにがん化するのかを解明し、診断・治療法や予防法を特定することを目的としています。
  • タンパク質は遺伝子よりもはるかに複雑であることなど研究には増殖や分析を行なう上で様々な阻害要因があるのですが、2002年にノーベル化学賞(当時島津製作所社員であり、現役サラリーマンとして初のノーベル賞受賞)を受賞した田中耕一氏の研究は「生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発」であり、これはプロテオーム解析の進歩に大きく貢献したものです。
  • 現在最先端の抗体医薬や細胞治療もある特定の一つの細胞の働きが解明されたところを対象にしているのであって、複数のタンパク質の相互作用を対象にしているのではないのですが、実際にはアルツハイマーにしても心筋梗塞にしてもがんにしても複数のタンパク質が関与していることが基礎研究レベルではわかっている場合があり、より効果的な治療の実現に今後プロテオミクスが主役として貢献することが期待されている最先端の分野です。

 

次回も先端技術編は続きます。

アムラン作曲トッカータ Toccata on "l'homme arme"

先週終わった第15回ヴァンクライバーン国際ピアノコンクールの予選課題曲で、マルクーアンドレ・アムラン(Marc-Andre Hamelin)が昨年作曲したトッカータ、Toccata on l'homme armeの楽譜がどうしても欲しくてCliburn Shopで注文し、10日ほどでやっと届きました!

f:id:jimkbys471:20170621054410j:image

l'homme armeとはフランス語で「武装した人」という意味です。

 

Cliburn Shopをあらためてのぞいてみました。あれっ なくなってる!

Scorecliburngiftshop.myshopify.com

 

そこで、どこか他で買えないかと思い探してみたら、イギリスのオンラインショップにあるようです。送料込で2,400円ぐらいです。

www.prestoclassical.co.uk

 

この曲の演奏はなんといっても今回のクライバーンで3位入賞しこの曲の演奏でも最優秀賞を受賞したアメリカの新鋭19歳、Daniel Hsu(ダニエル・シュー)の演奏が秀逸です。

コンクール後初の舞台での演奏がもうYoutubeに上がっています!

www.youtube.com

 

この曲は難しそうに聴こえますが、実際に楽譜を見て弾いてみるとやはり難しいです。

コンクール中のコンテスタントのインタビューを聞いても、「本当に難しい」という声がありました。

しかしその難しさは本番数か月前に、2時間近くのソロ・室内楽・協奏曲2曲のレパートリーを仕上げなければならない中初めてこの曲の楽譜を渡され本番で弾かなければならないということも踏まえての難しさでしょう。

5~6分、12ページの短い曲ですし、クライバーン本選出場を果たした30名の天才たちにとっては、コンクールで弾く難曲大曲の数々と較べて特に難しいということではないと思います。

 

わかりやすい主題と半音階的な進行、主題の展開と転調を理解すればなんとかなりそうです。

 

これまであまり国際コンクールの委嘱作品は弾く気になるものがなかったのですが、この曲は最初に聴いたとき、「弾いてみたい」と思いました。

トッカータと名のつく曲は、これまでにラヴェルシューマンプロコフィエフなど弾いてきましたが、やはりその躍動感が好きです。

自分も来週からコンクールを控えているのですが、ぼちぼち練習してみようかとおもいます。