ピアノ
ショパン前奏曲集作品28解凍、13日目は第13番である。 美しい曲である。ひたすら美しい。この美しさをどう表現するか。 またもや(11番に続き)ショパン先生は冒頭下段にlegatoと指示していらっしゃる。 この開離和音をlegatoでダンパーペダル控えめに弾くに…
ショパン前奏曲集作品28解凍、12日目は第12番である。 作品28中難曲トップ5に入るとされる(8番、16番、19番、24番と共に)12番であるが、弾き方にコツが2つあるのでそれを理解すればそれほど難しくはない。以前(6年前)に弾いていた頃はそれを知らずに弾い…
ショパン前奏曲集作品28解凍、10日目は第10番である。 この曲は自分としてはほとんどダンパーペダルは踏んではならないと思う。せいぜいクォーターペダルか。 運指もフィンガーペダルを使うようにとのパデレフスキ版の指示にある。 また曲目解説にも書いたが…
ショパン前奏曲集作品28解凍、9日目は第9番である。 この曲は、付点四分音符と三連符をノート・イネガルで弾くピアニストが多いし、自分もそう弾いてきたが、自筆譜の研究を読んでからは、ノート・エガルで弾くことに決めた。 これによってより雄大な曲想が…
ショパン前奏曲集作品28解凍、8日目は第8番である。 この曲は曲集中難曲のひとつと言われることがあるが、実は両手とも同じ音型が終始繰り返されるため、弾き方の使い方を覚えればそれほど難しいことはない。 以前、自筆譜の分析(29)において: 「9-10小節か…
ショパン前奏曲集作品28解凍、7日目は第7番である。 怖い曲である。作品28中最も音が少ない曲。ひとつの音の意味がますます大きい。 冒頭の「ミドーレシーシーシー」をどう弾くか。このモチーフは曲全体を通じて8回繰り返されるが、この「シーシーシー」は同…
ショパン前奏曲集作品28解凍、6日目は第6番である。 なんといっても演奏上の重要なポイントは左手で旋律をチェロの如く豊かなあたたかい音色で奏でることにある。 自然な滑らかな重心の移動、腕の重みを活かして大きな動きで自然な抑揚と音色の変化を出すこ…
ショパン前奏曲集作品28解凍、5日目は第5番である。 アナリーゼするまでもなく明らかだがこの曲の特徴は目まぐるしい転調である。これによる色彩のゆらぎが聴き手に伝わるような繊細なコントロールが求められる。 また以前この曲の簡単な解説で述べたとおり…
ショパン前奏曲集作品28解凍、4日目は第4番である。 ショパンの葬儀の際、6番と共にオルガンで奏されたというこの曲は、息の長い、動きの少ない旋律が、左手の和音連打の上に歌われる。 わかりやすい楽想ということもあり、15番「雨だれ」に次いで抜粋で演奏…
ショパン前奏曲集作品28解凍、3日目は第3番である(年内に24番までひととおり解凍するペース)。 コルトーが小川のささやき(The singing of the stream)と評した軽快な曲である。 実際、ショパンはこの曲の冒頭に leggiermente(軽く優美に)と指示してい…
ショパン前奏曲集作品28解凍、2日目は第2番である。 ハンス・フォン・ビューローが「死の予感」と呼んだが、自分としては「死」そのもののように思える。 音の少ない曲だが、それだけに1音1音のウェイトが高い。まず冒頭の2声であるところの左手における声部…
ここ2ヶ月ほど文献収集・研究を続けてきたショパン前奏曲集作品28。 約8年ぶりに弾き始め(解凍)ました。 毎日1曲に限定し、楽譜にアナリーゼ(和声分析など)を記し、デュナーミクやアーティキュレーションももちろん含め丁寧にさらいます。 まずは第1番ハ…
既に国際的に活躍しており、日本でも人気のピアニスト(今年10月に来日)、Andrew Tysonのショパン前奏曲集作品28の音源がApple Musicに会ったので聴いてみた。 ちなみに月額980円で聴き放題のApple Musicはなかなか優れものである。 CDも出ている。 https:/…
Apple Musicでショパン前奏曲集作品28の録音をいくつか保存しているが、これまで聴いたことのない或いは自分の知らないピアニストの演奏を聴いてみる。 Julien Brocalというフランスの若手ピアニスト(1987年生まれ)が昨年リリースした録音である。 彼の経…
これまで聴いていた音源に限定せず、最近のレコーディングで自分の好みに合うものはないか探している。 グラモフォンが昨年アップデートしたTop 10 Best Chopin Recordings (2017 update)の第9位にChristian Buduというピアニストのショパン前奏曲集作品28…
ここのところ1ヶ月半にわたり、自分にとって究極のピアノソロ作品であるショパン前奏曲集作品28について書いてきているが、実際に弾く前に知るべきこと、意識すべきこと、考えるべきことが多過ぎるので研究を継続している。 8年ほど前にこの曲集はひととおり…
前回に続き、加藤一郎氏のショパン前奏曲集作品28の自筆譜に基づくペダリングの分析について書く。今回は13番である。加藤一郎氏の分析については今回が最後になる。 加藤氏の指摘するとおり、13番には5箇所のペダリング指示があり、うち4箇所はドミナントで…
前回に続き、加藤一郎氏のショパン前奏曲集作品28の自筆譜に基づくペダリングの分析について書く。今回は2番である。 前回取り上げた1番とは対照的に、ショパンは2番では1か所(ペダルを踏む/あげるの組合せにおいて)しかペダリングを指示していない。しか…
前回に続き、加藤一郎氏によるショパン前奏曲集作品28の自筆譜に基づくペダリングの分析について書いてみる。 下図は1番の譜である。注目すべきは私が赤丸で囲んだ21小節目のペダルを上げる記号の位置である。 加藤氏の着眼の良さは、この小節においても、他…
ショパンという作曲家は、強弱(f,p,cres,decres,dim等)にしてもペダリングにしても、音楽理論的に「当たり前」であることは基本的に記譜しないので、西洋音楽の基本である音楽理論(特に機能和声)を理解し、作曲者の意図を正しく分析し把握しているかどう…
先日行なわれたピアノのマスタークラスにおいて、自分はレッスン生として参加したわけですが、講師であるピアニストが使われた用語の中で、とりわけ我々受講生の心に響いた言葉が、「彫琢」です。 彫琢とは、彫刻とは異なり、読んで字の如く「彫(ほ)って琢…
前回に続き、「こんな演奏は好きになれない」を13番から16番について述べてみる。 第13番 嬰ヘ長調: 4小節目の右手の五連符が均等でない演奏(第1音が長すぎる) 中間部、左手のラインが出ていない演奏 第14番 変ホ短調: テンポが速すぎて風呂場の早口言葉…
前回に続き、「こんな演奏は好きになれない」を9番から12番について述べてみる。 第9番 ホ長調: 右手の三連符と付点四分音符はショパンの記譜ではノート・エガルすなわち三連符の音価に合わせて弾くのがこの曲の壮大な曲想を表現するためにも正しいと思って…
前回に続き、「こんな演奏は好きになれない」を5番から8番について述べてみる。 第5番 ニ長調: テンポが速すぎる演奏。ショパンは確かにAllegro Moltoと書いているが、あまりに速過ぎてまるで練習曲の如くなり、色彩の変化も聴き取れない演奏 第6番 ロ短調…
今回がこのシリーズ最後になるが、前回に続き、「こんな演奏は好きになれない」を21番から24番について述べてみる。 第21番 変ロ長調: 左手の旋律を歌うのは良いが、右手の歌い方とのバランスが悪い演奏 第22番 ト短調: 左手ばかりになっている演奏 吠えす…
前回に続き、「こんな演奏は好きになれない」を17番から20番について述べてみる。 第17番 変イ長調: 和音中の動く音のライン(20小節、22小節など)が不明瞭 後半、11回鳴らされるバスのAsが無造作 第18番 ヘ短調: 4小節目最後の拍の五連符が無表情 休符の…
これまでショパン前奏曲集作品28は、ライブ、音源(CD、Youtube)で50人超のプロ、アマ(アマといっても国際コンクールがほとんど)の演奏を聴いてきたが、かなり高い水準の演奏であっても、どうしても気になってしまい好きになれない演奏があるので、どうい…
前々回、前回に続きウェブ上で簡単に入手できた自筆譜に基づき自分なりに作曲者の意図を汲み取ってみる。今回は13番、14番、15番、20番、22番。 13番 嬰ヘ長調: 最後の2小節が全面的に書き換えられている。ここにも後続の14番との連結を意識しているのであ…
前回の続き。今回は8,9,10,11,12番。 まずは第8番: 9-10小節かなり書き換えられた跡がある。ここは嬰ヘ短調から変ロ長調に遠隔転調するこの曲で最も印象的かつ自分が最も好きな箇所だけに、このように工夫の跡が自筆譜上でみられることはうれしい。 第9…
作曲者の意図を汲み取るには(版による音の違いをどう解釈するかを含め)、自筆譜にあたるのが最善の方法の一つである。 しかし一つ問題があって、同じ曲の自筆譜にも複数の種類が存在する可能性があることである。 それでも、どれか自筆譜に自らあたってみ…